アンジェラ・アキのすべて

● 2005.1002インタビュー

2005.10.02
HOMEリリース後のインタビュー内容


d0128285_2504685.jpgまず始めに、音楽に興味を持ったキッカケを教えてください。

家に電子ピアノがあってよく父が弾いてくれたのを見て、凄く興味を持ったんです。自分から「クラシック・ピアノを習いたい」ってお願いしました。あ、私は徳島の三方を山に囲まれて、テレビのチャンネルが2つしかないような凄い田舎で育ったんですよ。だからピアノの先生も周りにいなくて、本当に遠くまでレッスンに通っていました。

中学に上がった頃にはバイエルやブルグミューラーなどのベーシックな部分のレッスンは終わっていて、ハワイの高校を卒業するまではソロでコンチェルトを弾いたりオーケストラをバックに演奏していたんですが、何となく「クラシックもここまで勉強したけん、もういいかなぁ」と思っていたんです。だけど、ワシントンD.C.の大学に入って、1学期にクラシック・ピアノを勉強したら、その先生が凄く面白い先生だったので、その先生に音楽を習いたいと思い、ピアノを続けたんです。でもその先生はジャズの人だったので、その影響でジャズに傾倒していくんですけどね。


大学というのは音楽大学に行かれたんですか?

専攻は政治経済だったんですが、アメリカの大学って、専攻と副専攻があるので副専攻はジャズ・ピアノにしました。その先生はバークレー出身で、レニー・クラヴィッツのドラマーのシンディ・ブラックマンとバンドをやっていたり、エイミー・マンと一緒に演奏していた人で、本来はジャズの先生なのに部屋一面ビートルズやエルトン・ジョン、ビリー・ジョエルの写真が飾ってあったり、ニルヴァーナが好きだったり、面白い先生だったんですよ。

その先生に4年間ついて勉強して初めてジャズの世界に触れ、即興で演奏する楽しさを知って、ジャム・セッションやラテンのバンドをやったり、ピアノだけでいえばそこでいろんな分野を経験しました。卒業してからはポップスやシンガー・ソングライターとしての活動を始めたんですが、大学4年間でのジャズの勉強にはいろいろ刺激も受けましたし、自分の音楽の中に強い影響を与えていると思います。


大学に行くまではずっとクラシックを演奏されていたわけですが、その当時はクラシック以外の音楽も聴かれていたんでしょうか?

幼い頃から家ではよく音楽が流れていました。千昌夫の次はカーペンターズ、ビージーズかなと思ったらサブちゃんが流れるという感じで、和と洋をミックスして聴いていました。母親もよく歌っていたし、歌には興味がありましたね。

お母さんは私より100倍歌が上手いんですよ! お父さんによく言われるんですけど「おまえがここまでやれるんやったら、お母さんはもっとできとったわ」って(笑)。でもそれくらい歌は身近なもの。それがピアノと一緒になったのは高校くらいからだと思います。たくさん曲を作り始めたのがその頃でしたから。

d0128285_2542843.jpgピアノを途中でやめずに続けてこられた秘訣や、ご自身が行われた効果的なピアノの練習方法を教えてください。

ピアノをやめずに続けられた理由は母のおかげです。実際に何回もやめたくなったんですよ。他の子と遊びたいし、毎日何時間も練習しなくちゃいけない。楽しく練習していたわけじゃないんです。もうやめるって宣言したこともあるんですけど、その時うちの母親は 「やめたいならやめていいよ。でも1ヵ月考えて、それで本当にやめるならもう一度お母さんに言いなさい」 って言ったんです。これは凄くいい方法だと思いますよ。

やめてやる、って思いながら週に1回のレッスンと家での練習をこなすんですけど、なぜか約束の3日前くらいにふと、「いや、やめなくていいんじゃない?」って思うんですよ。なぜかそこで急に音楽の喜びを感じるんですね。約束の日になったら 「どう? ピアノやめる?」 ってお母さんに聞かれるんですけど、 「いや、もうちょっと続けてみる」 って答えちゃう。そういうやりとりが何回かありましたね。無理やりやらされていると感じても、やっぱりどこかに喜びがあるし、好きだから続けているんですよ。そしてそれが最終的にはやめたいという気持ちに勝つんですね。


練習がつらくても上達すればその喜びも大きくなっていきますしね。

その感動とか自分の感じるものが濃厚になってきますからね。工夫した練習に関して言えば、私だけじゃないかも知れないですけど、例えばベートーベンの『月光』を練習していたとします。第1楽章と第2楽章は簡単だから弾けるんですが、第3楽章は難しいので、なかなか上手く弾けないんです。 4段くらいやったらもう嫌や、ってギブアップしたくなるんですけど、そういう時は『月光』のCDの第3楽章を聴いて、耳が理解してから譜面を見て、CDも流して演奏するんです。そうすると演奏に詰まってもCDはどんどん流れていくじゃないですか。

だから一生懸命譜面を読んでついていこうとするんです。その練習のおかげで譜面を読んで消化するスピードが速くなったんですよ。詰まったところで一時停止したり巻き戻したりして何回も練習できるし、CDの演奏は有名なピアニストの方が演奏されているので強弱の付け方とかも譜面に書いてあるのを見るだけじゃなくて聴くほうが実感できるんですよね。このやり方を「それはカンニングですよ」と話される先生も、 「耳で理解することは大切だから」 と言われる先生もいらっしゃいますし、いろいろな考え方があると思いますけどね。

では曲作りについて伺います。曲のイメージはどのような時に浮かぶのでしょう。

環境がすべてなんですよ。「HOME」を作った時も「心の戦士」を作った時も、タッチや音がいいピアノを弾いている時はアイデアが降ってくる量が違うんです。自分で入り込めるんですよね。RD-700SXを弾いている時も弾いていて気持ちいいから勝手に手がどんどん動いていって、弾くのをやめたくないからメロディがどんどん生まれてくる。

RD-700SXのおかげで最近はアルバムに向けてどんどん曲が生まれてるんですよ。自分が一番好きなのはピアノの音だから、ピアノの音色がやっぱり自分のホームなんですよね。だからそのピアノがいい音色であればあるほど快適な家ということです。

では曲作りに関して、アレンジも含めて基本的なワークフローはありますか?

まず私が曲を作ってくるんですが、その時点でアレンジもある程度自分の中で聞こえているんですよね。ここでフィルを入れてとか、大体の骨組みがあって、それを松岡さんに最初に聴いてもらって「いい曲やけどAメロがちょっと弱いかな」とか「サビのフックが足りない」って言われて、もう一度考え直してくるとか(笑)。

その時点でメロディは実際に歌われているんですか? 方向性が一緒なんでしょうね。

きちんと歌詞がのっていることもあるし、単にフレーズだけの時もあります。いろんなこと、本でもそうだと思うんですけど、作者がいい作品を作る、成功するためには天才的なエディターがついているかどうかだと思うんですね。自分で全部やっていないっていうことを暴露するとかではなくて、本当に真剣にサポートしてもらっていて、一緒に曲を作り上げていくんですよ。

3人でひとつの曲に色を付けていくんですけど、でき上がった時に最初に考えていたのと全く違うってことがなくて、ただ、自分の思っていたこと以上に美しい色付けができている。だから3人がイメージしているものがそう遠くないんじゃないかとは思います。

方向性が一緒だし、リズム感とか、曲から生まれるインスピレーションが一緒なんだと思う。でもお互いにない発想を持っているからハッとすることもあります。アイデアを共有して作り上げるから面白いんです。私1人でやっていたらここまでできないです。

1月18日にリリースされた2ndシングル「心の戦士」のコンセプトや聴きどころを教えてください。 「心の戦士」で伝えたかったことは何でしょうか?

一度完成した曲を聴いた時に、松岡さんとの共通の印象として「凄くいいんだけど、ピアノだけ弱いよね」っていうのがあって、せっかくこんなに強いものができたのにこのまま出すのはもったいないって、ギリギリ間に合うかどうかだったけど、1日だけもらってやり直しにレコーディング・スタジオに行ったんです。「よし弾け!」「おっしゃー!」って感じで、歌わなくていいから立ち上がってガンガン弾いていたら、スタジオのアシスタントさんがうわぁ、っていう顔して見てた(笑)。でも心の戦士を聞く度にやり直してよかった! って思うんですよね。

曲のメッセージ自体が凄く前向き。人間は仕事や恋愛などで、日々戦っているものなので、落ち込む時や諦めたくなる時ってたくさんあると思うんです。でも生きることをやめずに前に進むことができるのは、私のイメージでは自分の心のどこかに戦士のような存在がいるからだと思ったんです。それは強さかも知れないし、真の姿とかポリシーかも知れない。そういうイメージが湧いたから歌詞はすんなり出てきましたね。自分を励ますことから始まった曲だけど、この曲を聞いて励まされたと言ってくれる人もいて……。そういう風に誰かが共感してくれるってことがとても嬉しいです。

今後の活動の展望をお聞かせください。

凄く嬉しい言葉ですね。私はピアノを弾いているシンガー・ソングライターといえばアンジェラ・アキって、みんながパッと思い付くくらいになりたい。そのためにライブやCDでより高いレベルを目指してものを作り続けたい。何を弾いても感動させられるんだって気持ちで演奏しなきゃだめですけど、できる限りの高いレベルを目指して、よりいい楽器で、またよりいい環境でピアノ・アーティストとして名前を残していきたいなという気持ちがあります。

よくアーティストの方が「歌を歌っていて1人の人でも人生を変えられたら」っておっしゃいますね。それは素晴らしいことですし、音楽の意味でもあると思います。でも、それが1人よりは100人のほうがいいじゃないですか。100人よりも1,000人のほうがもっといいこと。そういう影響を与えられることができる、どこかしらの位置に自分がいるのであれば、それを甘く見ちゃいけないなと思うし、適当にやってはいけないと思う。


アンジェラさんにとって、音楽は喜びも多いけれど、怖いことでもあるんですね。

凄く怖いです。だって、実際に音楽ってネガティブなイメージを伝えてしまうこともあるわけですから。でも、とにかくいいものを作りたいという気持ちが一番強いですけどね。私は音楽を目指してやっている人たちに向けてのメッセージだとしたら、私も去年デビューした新人ですけど、同期の人たちと比べたら軽く5年は年上なんですよ(笑)。

でも、私が今28歳だから言えることといえば、ただ漠然と「これがやりたい」と言うだけではなくて、明白な夢を持つことが大切だということ。趣味が夢になって実現するには明白な目標があることが大前提だと思います。私もずっと音楽をやっていて、今までも何度もレコード会社と契約するとか、そういう話になったんですが、それが何で上手くいかなかったかというと、明白なゴール、目標がなかったからなんです。

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それは確固たる決意ということにも繋がるのでしょうか。

そうかも知れませんね。半年から1年くらいの短期間と、目標を1~3年の中期間、4~ 5年以上先の長期間の3つに分けたとして、頭で考えるだけじゃなくて、それを紙に書くだけで趣味の枠から一歩踏み出すきっかけになると思います。私もこれから目標としているところに行けるとしたら、これが秘訣なんだよって胸を張って言えるんですけどね。

ワシントンD.C.にいた時にウェイトレスのアルバイトをしていたんですけど、お店にエアロスミスのブラッド・ウィットフォードが来たことがあるんです。そのテーブルに行って、おそるおそる「ブラッド、私も音楽をやっているんだけどひと言アドバイスをください」って言ったら、「ここに座れ」って言われて家族の中に座らせてもらって(笑)。 「アンジェラ、僕は何十年もエアロスミスのメンバーとして音楽の世界にいる。これはなぜだと思う?」 って言うから 「それは天才的なギタリストだからじゃないですか」 って答えたら、 「才能とは全く関係ないんだよ。僕がこれだけ続けてこられたのは、ただ努力してきたから、それだけなんだ。そのことだけは忘れないで欲しい」って言われたんです。目標があってそれに向かって努力をすれば誰だってできることだと。

この言葉は未だに忘れない。その時にもらったサインを今も部屋に飾っていて、自分への戒めになっています。面倒くさくなって諦めたくなる時って必ずあると思う。私にもこれからそういう時が来るはずです。でも頑張ろうって思い直して、またくじけて……。人間はその繰り返しなんじゃないかな。特に若ければ若いほど、早く目標が持てれば早く到達できる可能性も増えてくるわけですからいいですよね。私もそうだし、いろんな理由で回り道する人もいるだろうけど、ここがスタートだという時には目標がとても大切だと思うんですよ。 。

エフェクターの中で特に印象に残っているものはありますか?

向こうでバンドをやっていた時にRD-600を持っていました。海外のアーティストって、ローランドの鍵盤楽器を使っている人が多いんですよね。ライブハウスに置いてあるのもRD-500、600が多かったし。あと、その頃のバンドのギタリストもアンプはJCを使っていました。


なぜRD-600を選ばれたのでしょうか。

A: タッチも弾きやすいし、鍵盤の重さなのかな? 弾きやすいのはもちろんですけど、ステージに立った時のスタイルがいいんですよね。


ピアノの音は聴きなれていると思いますが、ローランドのピアノの音はどのように感じられますか?

A: RD-500や600の頃はそんなにもの凄い、という感覚はなかったんですけど、RD-700SXを最初に弾いた時は、本当にこれは凄い!と思いました。この前ライブがあって、東京では生ピアノを弾いたんですが、その1週間くらい前に大阪でもライブがあって、その時はRD-700SXを弾いたんです。

ここだから言うわけじゃなくて、RD-700Xのほうが音が硬くまとまって出ていくし、モニターの返りがいいから演奏しやすい。特に音が広がっていくオープン・スペースで演奏する時は絶対RD-700SXを使ったほうがいいと思う。RD-700SXは特別で、今までの楽器とは世界観が全然違う感じで、これを弾く時はテンションが上がるんですよね(笑)。


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by a20050309 | 2005-10-02 19:14 | ●アンジェラ2005